銭湯への道 #3|会社員が銭湯を始めるには、結局いくら必要なのか調べてみた

将来、地方で銭湯をやってみたい。

そんなことを考え始めてから、候補地を調べたり、実際に現地へ行ったり、銭湯を引き継いだ人の事例を見たりするようになりました。

「銭湯への道」#1では、候補地の一つとして考えている那須塩原・黒磯を家族旅行も兼ねて見に行きました。

#2では、閉業した銭湯を若い経営者が引き継ぐ事例を見て、特に気になった「改修費が想定以上に膨らむ」という現実について考えました。

そこで次に気になったのが、もっと根本的なことです。

会社員の自分が、本当に銭湯を始めようとしたら、結局いくら必要なのか。

まだ物件を探して買うような段階ではありません。

それでも「いつかやりたい」と言っているだけでは、いつまでも夢のままです。

今回は一度、銭湯を始めるために必要なお金を分解して、自分ならどこまでリスクを取れるのかまで考えてみることにしました。

目 次

「物件を買うお金」だけでは全然足りなさそう

調べる前は、もっと単純に考えていました。

既存の銭湯を引き継ぐ。

必要なところを改修する。

そこに自分がやりたい設備を加える。

新築で一から作るよりは、かなり安く始められるのではないか。

もちろん、今でも基本的には「継業」を第一候補として考えています。

ただ、調べてみると、少なくとも必要なお金は、

①物件・事業を取得するお金
②既存設備を使える状態にするお金
③自分が作りたい銭湯にするお金
④設計・許認可など開業までに必要なお金
⑤事業が軌道に乗るまでの運転資金
⑥想定外の工事に備える予備費

くらいには分けて考えた方がよさそうです。

特に怖いのが②と⑥です。

古い銭湯は「建物」より「中身」を見ないといけない

僕が考えているのは、大規模な温浴施設を新築することではありません。

既存の銭湯などを引き継いで、必要な改修をしながら、地域の人が日常的に利用できる場所として再生するイメージです。

ところが、銭湯には普通の建物にはない設備がたくさんあります。

ボイラー。

ろ過装置。

循環ポンプ。

熱交換器。

貯湯タンク。

配管。

場合によっては煙突。

前回調べた、100年以上続く「角湯」の事業承継募集はかなり参考になりました。

このケースでは、ボイラーや循環ポンプ、ろ過装置、熱交換器などについて、次回の大規模メンテナンス・交換時に約900万円。

さらに銭湯として引き継ぐ場合には、煙突と重油タンクの解体・移設に約1,300万円が見込まれていました。

合計すれば約2,200万円です。

もちろん、これは一つの銭湯の事例にすぎません。

ただ、仮に物件を安く取得できたとしても、設備を使える状態にするだけで数千万円かかる可能性がある。

逆に物件価格が多少高くても、主要設備が更新されていれば、結果的には安く済むかもしれません。

銭湯の継業を考えるなら、

「この物件はいくらか」

以上に、

「機械室にあといくらかかるのか」

を見る必要がありそうです。

さらに「自分が作りたい銭湯」にするお金が必要

そして、僕は昔ながらの銭湯をそのまま再開したいわけでもありません。

考えているのは、

地域の人が日常的に来られる。

朝から利用できる。

風呂上がりにコーヒーを飲んだり、少しゆっくりしたりできる。

子ども連れでも利用しやすい。

地元の人だけでなく、観光客や移住者も自然に混ざる。

そんな場所です。

これまでの検討では、駐車場30台程度、湯上がりスペース20席程度、サウナ12人程度といった規模も仮置きしていました。

ただ、今回お金のことを考えてみて、全部を最初から作る必要はないとも思うようになりました。

例えばサウナです。

もちろん、サウナが集客につながる可能性はあります。

一方で、僕自身が作りたい場所を考えると、サウナの優先順位はそれほど高くありません。

それよりも、

朝から風呂に入れること。

風呂上がりにコーヒーを飲めること。

少し座って話したり過ごしたりできること。

車で来る地域なら十分な駐車場があること。

子ども連れでも使いやすいこと。

こうした部分の方が、自分がやりたい銭湯の根幹に近い。

「あったら魅力的なもの」と、
「この銭湯をやる意味に関わるもの」。

この二つを分けることは、初期投資を抑える意味でも重要だと思っています。

営業できる状態にするためのお金も必要

さらに、銭湯は設備を直せば自由に営業できるわけではありません。

公衆浴場として営業するには許可が必要で、自治体の条例で定められた構造設備基準などを満たす必要があります。

建物の状態によっては、建築や消防などの確認・対応も必要になるでしょう。

つまり、

「古い銭湯を買ってDIYで少しずつ直せばいい」

という世界ではなさそうです。

候補物件が見つかったら、契約する前に保健所や専門家に相談し、どこまで手を入れる必要があるのか確認する。

これも、物件選びの重要なプロセスになりそうです。

忘れてはいけない「開業した後のお金」

そして、もう一つ忘れてはいけないのが運転資金です。

開業した瞬間から、お客さんが十分に来て黒字になるとは限りません。

人件費。

水道光熱費。

燃料費。

清掃費。

消耗品。

設備のメンテナンス。

保険。

借入をすれば返済もあります。

銭湯は特に、エネルギーを大量に使う事業です。

売上が安定するまで時間がかかっても、毎日お湯を沸かすお金は必要です。

だから、

「開業までにいくら必要か」

だけではなく、

「開業後に何か月持ちこたえられるか」

まで含めて資金計画を作る必要があります。

ここを削ってギリギリで開業するのは避けたいと思っています。

では、結局いくら必要なのか

ここまで調べたのに、実はまだ、

「銭湯を始めるには5,000万円必要」

といった答えにはたどり着いていません。

でも、それでいいのだと思うようになりました。

物件価格も違えば、設備の状態も違う。

どこまで改修するかも違う。

総事業費は、

物件・事業取得費

既存設備の改修・更新費

自分がやりたい部分への追加投資

設計・許認可・開業準備費

運転資金

予備費

で決まります。

だから今後、具体的な物件を見るときには、この6項目で一つずつ数字を入れてみようと思います。

そのうえで、

「最低限なら」
「現実的には」
「かなり手を入れるなら」

の3パターンを作る。

そうすれば、「銭湯には○千万円かかるらしい」という話ではなく、

「この物件で、自分がやりたい銭湯を作るならいくらか」

を考えられるようになります。

自分のお金は「2,000万円くらいまで」が一つの目安

一方で、総事業費とは別に、自分なりの基準も考えてみました。

今の感覚では、最初に自分のお金として投入するのは、2,000万円程度までに抑えられるのが理想です。

もちろん、2,000万円は小さなお金ではありません。

会社員として長く働いて作った資産を投じることになります。

それでも銭湯を本当に事業としてやるのであれば、ある程度のリスクを自分で取る必要はあると思っています。

一方で、家族の生活や今後必要になるお金まで事業につぎ込むつもりもありません。

だから、

「総事業費を2,000万円にする」

のではなく、

「自分が最初にリスクを取るお金を2,000万円程度にする」。

今のところは、そんなイメージです。

残りは借入を使う

そうなると当然、

「2,000万円を超える部分をどうするのか」

という問題が出てきます。

まず考えられるのは借入です。

今回調べてみると、公衆浴場は日本政策金融公庫の生活衛生関係営業向け融資の対象になっています。

一般公衆浴場業については、設備資金を対象とした融資制度もあります。

もちろん、融資制度に枠があることと、実際に自分が借りられることは別です。

事業計画や返済可能性を見てもらう必要があります。

ただ、

「自分で全額貯めてから銭湯を買う」

ことだけが選択肢ではない。

これは会社員として将来の開業を考えるうえでは大きなポイントでした。

自己資金2,000万円を核にして、事業として返済できる範囲で借入を組む。

その方が現実的だと思っています。

クラウドファンディングも、かなり相性がよさそう

そして今回、もう一つ調べたのがクラウドファンディングです。

銭湯とクラウドファンディングは、思った以上に相性がよさそうです。

実際に銭湯関連のプロジェクトを調べると、

老舗天然温泉銭湯の再生で約307万円。

銭湯の大改装で約202万円。

100年以上続く銭湯の再活用で約154万円。

といった例がありました。

さらに大きな例では、新宿での銭湯改装プロジェクトで1,500万円を超える支援を集めています。

もちろん、こうした成功事例を見て、

「クラウドファンディングで1,000万円集めればいい」

と考えるのは危険です。

知名度や既存のファン、企画内容などによって結果は大きく変わるからです。

僕の場合は、クラウドファンディングを借入の代わりとして考えるより、別の意味で使ってみたいと思っています。

お金を集めるだけでなく、「応援してくれる人」を作る

僕がやりたいのは、単に風呂を提供する施設ではありません。

地域の人が普段から来る。

観光で来た人も立ち寄る。

移住してきた人も来る。

そこで人が少しずつつながる。

そんな場所を作れたら面白いと思っています。

だとすれば、

「この銭湯を作りたいのでお金をください」

ではなく、

「こういう場所をこの地域に作ろうと思っている。一緒に作りませんか」

というクラウドファンディングができるかもしれません。

例えば、

オープン後に使える入浴券。

コーヒーチケット。

名前を施設のどこかに残す。

プレオープンへの招待。

地域の人と一緒に作るイベント。

そういう形で、開業前から関係を作る。

そして何より、

「この場所を応援したい人が本当にいるのか」

を確かめる。

これは資金調達以上に重要かもしれません。

クラウドファンディングが成立しないのであれば、事業そのものについて考え直す材料にもなります。

そう考えると、クラウドファンディングは資金調達であると同時に、開業前のマーケティングにもなりそうです。

補助金は「使えたら使う」くらいで考えておく

公衆浴場については、自治体によって設備改修などを支援する制度もあります。

ただ、調べてみると対象者や対象設備、補助率などは自治体によって違います。

既存の公衆浴場経営者を対象にした制度もあり、新しく引き継ぐ自分が必ず使えるとは限りません。

そのため、

「補助金が出るからこの金額でできる」

という事業計画にはしたくありません。

まず補助金なしでも成立する事業を考える。

そのうえで、候補地と物件が決まった段階で使える制度を調べる。

この順番がよさそうです。

「2,000万円+α」で、どこまでの事業ができるのか

今回調べてみて、銭湯を始めるのに必要な総額はまだ分かりませんでした。

でも、自分の中では一つ前に進んだ感覚があります。

自己資金は2,000万円程度まで。

それを核にして借入を使う。

クラウドファンディングも検討する。

使える補助制度があれば活用する。

そして、開業時から全部を作ろうとしない。

サウナのように後から追加できるものは、事業が軌道に乗ってからでもいい。

こう考えると、

「いつか銭湯をやりたい」

という漠然とした話から、

「2,000万円の自己資金を使って、どこまでの事業を組み立てられるか」

という問いに少し変わってきました。

次は、資金調達をもう少し具体的に考えてみたい

次に調べたいのは、

自己資金2,000万円を前提にしたとき、どのくらいの事業規模まで現実的なのか。

例えば総事業費が5,000万円なら、残り3,000万円をどう調達するのか。

借入はいくらまでなら返せるのか。

クラウドファンディングでは何を目標にするのか。

そして、その借入を返すには一日何人のお客さんが必要なのか。

ここまで数字にできると、「いつかやりたい」から、かなり事業計画に近づいてくる気がします。

会社員を続けながら、どこまで準備すればこの構想を実現できるのか。

引き続き一つずつ調べていこうと思います。

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