家族旅行で那須塩原に1泊2日。あわせて「地方で銭湯を運営するなら?」という視点で、那須塩原駅・黒磯駅周辺の空気感を見てきました。
結論を先に言うと、
- 那須塩原駅は“観光の経由地”感が強い
- 黒磯駅は“滞在したくなる生活感”があり、朝〜昼に人流がある
- ただし、どちらも生活は車前提
- 温泉ホテルは日帰り入浴も受け入れており、銭湯的役割を一部担っている可能性は感じた(ただし今回は日帰り利用者数は確認できず)
このあたりが今回の一次所感です。
なぜ那須塩原を“候補地”として見たのか
僕が地方で銭湯を運営し、地域コミュニティの場にしていく構想を考える中で、那須塩原は「東京からのアクセス」「観光と生活のバランス」という点で気になっていました。
今回は家族旅行なので本格調査ではありませんが、現地に行くことでしか掴めない
- 人の流れ
- 街の密度(徒歩で成立するか)
- 生活感
を見たかった、というのが目的です。
1泊2日の行程(ざっくり)
- Day1:那須塩原駅周辺を散策 → ホテルにチェックイン
- Day2:黒磯駅周辺を散策 → 帰宅
子連れの移動なので行動範囲は限られます。だからこそ「駅前の空気感」と「徒歩導線」の観察に寄せました。
銭湯候補地として見たチェックポイント(観察メモ)
1) 人の流れ:那須塩原駅は“経由地”に見えた
那須塩原駅は、駅前にあまり観光スポットや魅力的な立ち寄りどころがない印象でした。
駅前にレンタカーショップが多く、観光客の動きとしては
新幹線で到着 → レンタカー → 山側(温泉ホテルや動物園など)へ
という流れが「型」としてできているように見えました。
結果として、駅前は「滞在する場所」というより通過点。
少なくとも駅前だけを見る限り「人が溜まる構造」ではないように感じました。
2) 人の流れ:黒磯駅は“滞在”が生まれていた(朝〜昼が強い)
一方で黒磯駅は、駅前のベーカリーやカフェがオシャレに整備されていて、観光客と地元の人が混ざって使っている印象がありました。
特に肌感として人の流れがあったのは、朝〜昼。
子連れで散策していても「動いている街」だと感じました。
また、図書館が綺麗に整備されていて、ここも大きいポイントです。
観光地っぽさだけではなく、生活者の場が駅前にあることで、「この街に住んでいる人がいる」という手触りが出ていました。
3) 導線:黒磯は“駅前〜カフェ周辺”が強い
黒磯で「ここに銭湯があったら寄るかも」と思えたのは、駅前〜カフェ周辺のあたりでした。
(駅前とカフェ周辺はほぼ同義で、同じエリアとして捉えています)
銭湯は「目的地」より「寄り道」になったときに強いので、
この“滞在が生まれている導線”があるのはポジティブに感じました。
4) ただし、どちらも生活には車が必要
両エリア共通で感じたのは、生活には車が必要ということです。
- 徒歩で成立する範囲はあるが、生活全体は車で回る設計に見える
- 銭湯をやるなら徒歩導線だけでなく、駐車・導線設計が重要
徒歩導線があると理想ですが、車前提の地域では「寄り道の設計」を変える必要がありそうです。
5) 競合の気配:温泉ホテルが“銭湯的役割”を担っている可能性
泊まったホテルも日帰り入浴を受け入れており、温泉のあるホテルでは銭湯的な役割(=入浴ニーズの受け皿)を一部担っているように感じました。
ただし今回は、実際に日帰り利用者がどれほどいたかは確認できませんでした。
(見た目で断定せず、次回は裏取りしたいポイントです)
この点は二面性があると思っています。
- プラス:入浴文化や「お湯に行く」習慣がある
- マイナス:入浴目的はすでに充足していて、銭湯単体では差別化しにくい
もし銭湯をやるなら「入浴」だけでなく、**場としての価値(居場所・会話・日常の交差点)**が必要になりそうです。
6) 事業仮説:主要客は誰になりそうか
今回の肌感だけで言うと、
- 那須塩原駅:観光の通過(経由)色が強い
- 黒磯駅:観光+生活が混ざって滞在が生まれている(朝〜昼が強い)
なので、仮に銭湯(あるいは銭湯に近い場)を作るなら、黒磯寄りの方が「日常客」が想像しやすいです。
ただし、どちらも車前提なので、主要客は
- 地元(車移動)
- 観光(車移動+滞在)
- 二拠点(週末利用)
の混在を前提にした設計が必要だと思います。
「銭湯コミュニティ」を想像したときの仮説
温泉ホテルが多い地域で銭湯(または銭湯的な場)をやるなら、
- “お湯”で勝負しない
- “日常に溶ける居場所”で勝負する
が現実的かもしれません。
例えば、
- 子連れでも寄りやすい
- 湯上がりに座れる(短時間でも居られる)
- 常連が居ても新規が入りやすい空気
- 観光地だからこそ「地元の場」を守るルール設計
このあたりが鍵になりそうです。
今回の結論:那須塩原は候補になり得るか
良かった点(3つ)
- 黒磯駅周辺に、観光と生活が混ざる“滞在の空気”がある
- 朝〜昼に人流があり、駅前〜カフェ周辺の導線が強い
- 図書館など生活者の居場所が整備されていて生活感がある
気になった点(3つ)
- 那須塩原駅周辺は“経由地”感が強く、駅前に滞在が生まれにくい
- 両エリアとも、生活は車前提で徒歩導線だけでは成立しづらい
- 温泉ホテルの日帰り入浴が銭湯ニーズを代替している可能性(ただし今回は利用実態は未確認)
次に調べたいこと(裏取り項目:今回の所感をデータで補強する)
今回の印象はあくまで“肌感”なので、次は事業判断に近づけるために、以下をデータで裏取りします。那須塩原エリアは「温泉の集積」と「車前提」が強いので、銭湯(銭湯的な場)が成立する条件を分解して確認したい。
1) 入浴施設の分布(銭湯/温泉/日帰り)=4つの集積として捉える
このエリアは一枚岩ではなく、ざっくり4つの集積に分かれて見えます。
A. 黒磯市街地〜那珂川沿い(“地元+近郊客”型)
黒磯駅から車圏に、宿併設の日帰り温泉が入る(例:那珂川温泉 皆幸乃湯は「黒磯駅より車で5分」と案内)。
→ “日常使い”に近い利用が出やすいゾーン。
B. 那須塩原駅〜西那須野(“新幹線×車”ハイブリッド型)
那須塩原駅近郊に駅前日帰り施設がある(例:那須塩原駅前温泉など)。
→ 新幹線来訪者を拾える可能性はあるが、実態は車利用も大きい前提になりそう。
C. 板室温泉(“湯治場・ローカル観光”型)
板室温泉街に日帰り入浴施設があり、伝統的な入浴法(例:「網の湯」)など特徴もある(例:板室健康のゆグリーングリーン)。
→ 観光要素がある一方、地域住民のリピートも作りやすい「生活利用」が混ざる。
D. 塩原温泉〜奥塩原新湯(“温泉郷・外湯/共同浴場”型)
塩原温泉は日帰り温泉の案内・マップがまとまっており、外湯・共同浴場も含め「湯めぐり」の形で集積。奥塩原新湯には共同浴場が複数(寺の湯/むじなの湯/中の湯など)あり、協力金を入れて利用する形が紹介されている。
→ “温泉郷の文化資産”として強いが、日常固定客の作り方は黒磯〜平地側と別物。
ここから得たい結論:
黒磯(平地側)で「習慣利用」を狙うのか、温泉郷側で「文化・観光体験」に寄せるのか。銭湯像(回転・滞在・価格・導線)を分けて考える必要がある。
2) 生活人口の動き(居住者・移住者・子育て世帯)
人口構成(前提)
那須塩原市(令和2年国勢調査の概要):0〜14歳 12.6%、15〜64歳 59.0%、65歳以上 28.4%。
→ 子どもは一定いるが、高齢比率も高め。固定客の主力は「働き世代+高齢」の両取り設計が現実的。
移住・転入超過のトレンド
市の総合戦略では2018年以降は転入超過。ただし15〜19歳は大幅な転出超過で、「10代を除く多くの年代で転入超過」という整理。
また東京圏からの移住支援(世帯100万円・単身60万円+子加算等)も案内されている。
→ “移住が増えやすい下地”はあり、子育て世帯も狙える。ただし進学年齢で人口が抜けるため、固定客化は「20〜50代の日常導線」を強く作るのが重要。
次に当てたいデータ
古い資料より、住基や地区別人口(黒磯/西那須野/塩原など)の新しい年次で生活者の密度を確認する。市が地区別人口を公開しているのでそこを当てにいく。
3) 車前提で成立する「立地条件」(駐車・導線・近隣施設)
固定客狙いなら、温泉郷の中より平地側の生活導線が勝ちやすい。理由はシンプルで、固定客は「ついで・習慣」で来るから。
当たりパターン(優先度順)
- 生活導線の幹線沿い+出入りがラク
国道4号や主要県道・バイパス沿いで、反対車線からも入りやすい(Uターンが現実的、信号が近い等)。 - 駐車は“台数”より“停めやすさ”
目安:地元固定客モデルならまず20〜40台が現実ライン。
入口が見える/夜も安全/出庫がストレスない(ここが弱いとリピートが落ちる)。 - “セットで寄れる施設”が近い
食品スーパー、ドラッグストア、ホームセンター、飲食、コインランドリー、子ども施設など。
固定客に効くのは観光地より「日常の用事」。 - 冬の運用前提(凍結・除雪)
積雪そのものより、凍結・除雪でオペが崩れる。
駐車場の勾配、水はけ、歩路の凍結対策が“冬も来る店”を作る。
※この仮説は、平日夕方/土日朝/雨の日に現地で張り込みすると、机上比較が一気に進む。
4) 既存の「銭湯的」プレイヤーとコミュニティ性
結論として、この周辺は都市部の「煙突のある銭湯」よりも、温泉・日帰り施設と、温泉地の**共同浴場(外湯)**が中心に見える。
コミュニティ性が見えやすい既存例
- 奥塩原新湯の共同浴場:複数の共同浴場があり、利用者が清掃協力金・管理協力金を投函して使う形式が紹介されている。
→ 典型的にコミュニティ(+温泉地文化)で回るタイプ。 - 塩原温泉の日帰り入浴マップ:共同浴場を含む“湯めぐり”として整理(ただし休止/閉鎖は起き得るので個別確認が必要)。
平地側(黒磯〜那須塩原駅周辺)の競争環境
- 皆幸乃湯のように日帰り温泉として明確にうたい、市街から車で来る利用を想定した施設がある。
- 那須塩原駅前温泉のように、日常利用も入り得る駅近郊の施設もある。
→ ここに“銭湯型(習慣化・回数券・短時間・朝風呂)”をぶつけるなら、価格で勝負しない。
勝ち筋は 時間価値(短時間で整う)/居心地(作業・会話・子連れ)/駐車と導線 に寄せるのが基本になりそう。
5)(補足)ホテル日帰り入浴の利用実態
今回の旅行では、日帰り入浴がどれほど来ているかは確認できなかった。
なので次は「どの層が/どの時間帯に/どれくらい」利用しているかを、現地で観察または情報収集して裏取りしたい。
次回予告:候補地比較の枠組みを作る
次回は、今回のチェックポイントと裏どり項目をテンプレ化して、他の候補地(例:佐久など)にも当てはめられる「比較の枠組み」に落とします。
旅行ついでの一次所感を、継続的な検討に耐える形へ。
旅行ついでの下見は“駅前観察”だけでも価値があった
今回は家族旅行なので深追いはしませんでしたが、駅前の空気感だけでも差が見えました。
「黒磯の駅前〜カフェ周辺は滞在が生まれる」「那須塩原駅は経由地」——この手触りは、現地に行かないと分からなかったと思います。


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